デビュー作品である前作「タイピングハイ〜寂しがりやのイロハ」の続編。少し悲しげだった前作に比べて、前作をひっくつめてちょっとハッピーになれる読み応えになんだか嬉しくなりました。
人工知能についての独特の設定と表現に加え、主人公を含んだ各レギュラー陣の人間性が浮き上がってきたこの作品は、おそらくシリーズを通した上での二作目としての役割でもあるのでしょう。そう、この本そのもののテーマだった人間性って、きっとシリーズ全体でもテーマになっているのだと思うのです。
ハイテクノロジーな世界設定の中に生きる冷めた目線を持つ主人公が、現代社会のなかで生きる思考優先的な生き方を強いられる少年層にダブって見えてきてしまうので、主人公が「感情」を受け入れることを体現していく様にはとても勇気付けらます。
きっとこんな陳腐なこと書いても、全然伝わらないと思うんですが、とにかく読んでみてほしいです。
一回読んだら二回目には、心って、実は身体に直結している機能なんだってことを頭の隅に置いといて読んでみたら、きっと一回目の物語そのものの面白さのほかにも、見えてくるものがあると思う。
二重三重に味が出る、楽しめる作品だと思います。